花粉症治療薬の効果と副作用その4

抗ヒスタミン薬による熱性けいれんと肥満

この記事でわかること
・まだある抗ヒスタミンの副作用
・抗ヒスタミン薬による熱性けいれん
・抗ヒスタミンによる肥満

まだある抗ヒスタミンの副作用
 抗ヒスタミン薬の副作用ですが、もう2つの項目について書いて終わりにします。
 もう2つの項目とは、熱性けいれんと肥満についてです。
 抗ヒスタミン薬の服用で、熱性けいれんを起こしやすくしたり、肥満になりやすくしたりする可能性があります。


抗ヒスタミン薬による熱性けいれん
 まずは、熱性けいれんの副作用について説明します。
 抗ヒスタミン薬は、花粉症だけでなく風邪の鼻水などの治療を目的に処方されることがあります。
 風邪の時は、解熱薬とともに抗ヒスタミンが処方されることがあるのです。

 一方、5歳以下の子供は、発熱した際熱性けいれんを起こしやすくなるといわれています。
 熱性けいれんは、5歳以下の子供が発熱した際に起こる発作であり、日本人の有病率は7~11%とされています。
 抗ヒスタミン薬の服用は、この熱性けいれんを起こしやすくする可能性が指摘されています。
 具体的には、いろいろな研究を総合的に判断すると、抗ヒスタミン薬を使用したグループでは使用しなかったグループに比べ、発作発現までの時間が短くなり、発作時間が長くなるということになります。
 ヒトの脳の中では興奮性神経と抑制性神経により、バランスが保たれて通常の生活ができます。
 ヒスタミンの受容体は、以前述べた通りさらに細かくH1からH4に分かれています。
 H1からH4に分かれているヒスタミン受容体ですが、これらは興奮性の神経受容体と抑制性の神経受容体があるのです。
 抗ヒスタミン薬は、主にH1受容体に作用しますが、他の受容体への作用もないわけではありません。
 抗ヒスタミン薬の服用をすると、特に抑制系神経受容体への抑制が取れることになります。
 これにより興奮性が強くなることになるのです。
 また、これは、けいれんに対する閾値が下ることにもなります。
 よって、何らかの刺激によってけいれん発作を起こしやすくなる状況を生じます。
 このけいれん発作の誘発作用は抗ヒスタミン薬の第1 世代、第 2 世代で違いはないようです。
 少しでも熱性けいれんの特性に影響を与える可能性がある薬剤は注意する必要があることになります。
 市販薬の風邪の症状を抑える薬にも抗ヒスタミン薬は含まれていることが多いので、購入前に登録販売者や薬剤師へ相談することをお勧めします。


抗ヒスタミン薬による肥満
 抗ヒスタミン薬は、体重増加の副作用も報告されています。
 抗ヒスタミン薬による肥満の主な原因は、いくつかあります。
 項目に分けて説明します。

 まず第一に、抗ヒスタミン薬が脳内のH1受容体を遮断することで、食欲が増加する可能性があります。
 H1受容体は脳の視床下部にも存在しており、視床下部満腹中枢の刺激を仲介しています。
 この受容体が遮断されると、食欲のコントロールが妨げられ、食事摂取が増加するリスクがあります。

 その次に、抗ヒスタミン薬が脳内神経伝達物質であるセロトニンの代謝を低下させることが挙げられます。
 セロトニンは精神の安定やリラックスに関与しており、その代謝低下によってエネルギー消費が減少する可能性があります。
 また、セロトニンはインスリンの分泌を刺激し、血糖値を下げる効果もあります。
 血糖値の低下は空腹感や甘いものへの欲求を引き起こすことに繋がることがあります。

 これに加え、抗ヒスタミン薬のH1受容体遮断により、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌が増加する可能性があります。
 グレリンは食欲中枢を刺激し、食事摂取を増加させる影響があります。

 要するに、抗ヒスタミン薬は食欲増加とエネルギー消費低下という2つのメカニズムを介して肥満のリスクを引き起こす可能性があることになります。
 ただし、これらの作用は使用される抗ヒスタミン薬の種類や個人差によって異なります。
 また、抗ヒスタミン薬だけが肥満の原因ではなく、食事内容や運動などの生活習慣も重要な影響を与えます。
 抗ヒスタミン薬を使用している場合は、必ず主治医と相談しながら適切な体重管理を心掛けましょう。

参考文献・サイト
Takano T et al. Pediatr Neurol. 2010 42(4):277-9
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/febrile_seizures/febrile_seizures.pdf

タイトル写真提供|Priscilla Du Preez/Unsplash
文章内写真提供|Daniela Dimitrova/Pixabay, Michal Jarmoluk/Pixabay

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次