薬物乱用頭痛

薬物乱用頭痛

この記事でわかること
・薬物乱用頭痛の概略
・薬物乱用頭痛の診断基準と治療法
・薬物乱用頭痛の原因となる痛み止めの種類
・薬物乱用頭痛の予防と対処法
・頭痛を予防する生活改善のポイント

薬物乱用頭痛とは
 薬物乱用頭痛とは、鎮痛薬を過剰に使用することによって引き起こされる頭痛のことです。
 鎮痛薬を長期間にわたって使用すると、脳内の神経伝達物質や受容体に影響を与え、本来の目的と逆の効果である頭痛を誘発したり、悪化させたりする可能性があるのです。
 薬物乱用頭痛は、医師から処方された医療用医薬品の鎮痛薬でも、市販されている一般用医薬品および要指導医薬品の鎮痛薬でも、生じる可能性があります。
 これらの鎮痛薬を高頻度に使用したり、長期間に使用したりすることが原因となります。

ロキソプロフェンを成分として含む医療用以外の鎮痛薬は、要指導医薬品に分類されます。
 要指導医薬品は、薬剤師の指導のもとで購入することになります。
 本文では、一般用医薬品および要指導医薬品をまとめてOTC*医薬品と表現することにしています。
 *OTCとは、Over The Counterの頭文字をとったもの

 それでは、薬物乱用頭痛について項目に分けて説明します。

薬物乱用頭痛の診断基準と治療法
 薬物乱用頭痛の診断基準と治療法についてから説明していきます。
 国際的な頭痛の分類方法をまとめた国際頭痛分類(ICHD-IIIß)においては、以下の3つが示されています。
1. 月に15日以上頭痛がある
2. 慢性・急性の頭痛治療薬を、3か月以上乱用している
3. その頭痛は、治療薬の過剰摂取によって形成・悪化したものである

 これらを満たす場合は、薬物乱用頭痛と診断されます。
 ただし他の原因による頭痛を除外する必要もあります。
 これらに当てはまると思われる場合は、医師に相談されることをおすすめします。

 薬物乱用頭痛の治療法は、原因となる鎮痛薬の使用を中止することです。
 ただし、鎮痛薬をやめると、リバウンドと呼ばれる反動で頭痛が強くなることがあります。
 その場合は、別の種類の鎮痛薬やステロイドなどを一時的に使用したり、入院して制吐剤や補液を受けたりすることもあります。
 また、頭痛予防薬を投与することで、頭痛の発生や悪化を抑えることができます。
 頭痛予防薬には、以下のようなものがあります。
・アミトリプチリン
・ロメリジン塩酸塩
・プロプラノール
・チザニジン
・トピラマート
・ガバペンチン

 これらの頭痛予防薬は、鎮痛薬とは異なり、頭痛が起きた時に服用するのではなく、毎日定期的に服用することで効果が現れます。
 また最近では、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブといった注射薬も登場しています。
 これら、頭痛予防薬の選択やその処方は、医師の診断によります。

薬物乱用頭痛の原因となる痛み止めの種類
 次に、薬物乱用頭痛の原因となる痛み止めの種類について説明します。
 結論から述べると、ほとんどすべての鎮痛薬が該当するということになります。
 原因薬剤となる鎮痛薬は、以下のように分類できます。
・アセトアミノフェン
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・エルゴタミン製剤
・トリプタン製剤
・オピオイド(麻薬)
・複合製剤

 これらの鎮痛薬は、それぞれ効果や副作用が異なります。
 しかし、いずれの薬剤も高頻度に使用したり、長期間に使用したりすると、脳内の神経伝達物質や受容体に影響を与えるのです。
 これにより、本来の目的と逆の効果である頭痛を誘発したり、悪化させたりする可能性があります。
 特に、トリプタン製剤やエルゴタミンは片頭痛用の鎮痛薬であり、これらの薬剤を服用するには医師の処方が必要ですが、これらも乱用により薬物乱用頭痛になるリスクを有しているのです。
 頭痛に対しOTC医薬品の鎮痛薬を使用し、その鎮痛薬を反復使用することで薬物乱用頭痛が発生している現状があります。
 なお、アセトアミノフェンは、ロキソプロフェンナトリウム(製品名|ロキソニン®など)やイブプロフェン(製品名|イブ®など)の非ステロイド性抗炎症剤とは作用機序が異なります。
 このため、アセトアミノフェンは肝臓に障害のある人を除くと、比較的安全な薬剤と考えられていますが、薬物乱用頭痛の原因となり得ることに注意が必要です。
 アセトアミノフェンは、OTC医薬品ではタイレノール®など、医療用医薬品ではカロナール®などとして流通しています。

薬物乱用頭痛の予防と対処法
 薬物乱用頭痛の予防法を説明します。
 最も理想的な対処方法は、鎮痛薬を使いすぎないことです。
 鎮痛薬は、頭痛が起きた時に必要な分だけ服用し、月に10日以上同じ種類の鎮痛薬を使わないようにしましょう。
 また、片頭痛や緊張型頭痛などの慢性的な頭痛に悩む人は、生活改善などの方法も試してみましょう。

頭痛を予防する生活改善のポイント
・睡眠は十分に取り、毎朝決まった時間に起きる
 睡眠不足は、頭痛の誘因になります。
 自分に必要な睡眠時間は人により異なりますが、仕事や娯楽で睡眠を削ることはやめましょう。
 また、毎日同じ時間に起きることで体内時計のズレが生じるのを防ぎます。
 さらに、同様の理由から睡眠の取り過ぎも逆効果になります。
・食事は決まった時間に摂る
 食事の偏りや不規則さは、栄養不足を招き、頭痛を引き起こします。
 1日3食きちんと食べましょう。
・飲酒や喫煙は控える
 アルコールやタバコは、血管の収縮や拡張を引き起こし、頭痛を悪化させます。
 特に片頭痛の人は赤ワインを避けましょう。
・過食や偏食は避ける
 食べ過ぎや食べなさ過ぎは、胃腸の働きを低下させ、頭痛を誘発します。
・チーズやチョコレートを避ける
 チーズ、チョコレートおよび前述の赤ワインに、片頭痛の引き金になるチラミンを含む食品として有名です。
 これ以外にもチラミンを含む食品はありますが、いたずらに食べ物を避けるのはその選択の考慮や食べるものの制限から生活のストレスが生じます。
 チーズ、チョコレート、赤ワイン以外の食品で頭痛を生じることがわかれば、その時点からその食品の摂取を避けるなどの対応を考えるのでよいと思います。
 この他、グルタミン酸、亜硝酸ナトリウム、ポリフェノールを多く含む食品も頭痛を生じさせやすいと言われています。
・ストレスを溜めない
 ストレスは、筋肉の緊張や血管の収縮を引き起こし、頭痛を起こしやすくします。
 リラックスできる方法を見つけてそれを実践することで、ストレス解消につなげましょう。
・運動をする
 適度な運動は、血行を良くし、筋肉の柔軟性を高めます。
 また、エンドルフィンなどの快感物質を分泌させてストレスを軽減します。
・姿勢を正す
 デスクワークやパソコン作業などで長時間同じ姿勢をとると、首や肩の筋肉がこりやすくなります。
 こまめに休憩をとってストレッチしましょう。
・目の疲れを防ぐ
 目が疲れると頭も疲れます。目に負担がかかるような光や画面から離れて目を休めましょう。

 これらの方法はすべて自分でできるものですが、これらを実行しても頭痛が改善しない場合は、医師に相談してください。

まとめ
 以上が、薬物乱用頭痛についての情報です。
 薬物乱用頭痛は、鎮痛薬の乱用によって起こる悪循環ですが、正しい知識と治療法を身につければ改善できます。
 頭痛に悩む人は、自己判断せずに専門医に相談してください。
 頭痛の専門医は、以下から調べることができます。
https://www.jhsnet.net/ichiran.html

参考文献・サイト
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11676887/
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/internal-disease/headache/medication-overuse-headaches/
https://brand.taisho.co.jp/contents/naron/300/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/58/5/58_411/_pdf
https://goodhealth.juntendo.ac.jp/medical/000261.html
https://inamura-clinic.com/headache_adult.html
https://www.daidaicl.com/medicine/

タイトル写真提供|Pexels/Pixabay
文章内写真提供|Michal Jarmoluk/Pixabay, Pixabay Stock Snap/Pixabay

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